つまようじも、なるべく日本製を選ぶようにしていました。
とはいえ、深く考えて選んでいたわけではありません。
食卓に置いてあるのが当たり前で、なくなったら日本製と書かれたものを買い足す。
それだけのものだと思っていました。
国産のつまようじを作る会社が、全国でもう2社しか残っていない。
そんな話は、想像もしていませんでした。
きっかけはXでした。
大阪の菊水産業さんという会社が「さすがに国産つまようじではバズらんかぁ」と投稿していて、それが数百万回も表示されていたんです。
国産つまようじ。
そんな言い方をするということは、国産ではないつまようじが当たり前になっているということです。
同じようにSNSがきっかけで買ったツバメノートの北斎コラボもそうでしたが、作っている会社の話を知ってしまうと、一度は自分で確かめたくなります。
気になって注文してみました。
届いた箱を裏返して、そこに書いてあった文章を読んで、正直なところ少し驚きました。
日本製を選んでいたつもりの自分が、何も知らずに選んでいたと分かったからです。
この記事は、国産のつまようじが一度ほぼ姿を消していたという話と、実際に2種類買って使ってみた感想です。
口に入れるものの材料と工場が、はっきり分かる。
毎日使うようなものではありませんが、それでも手に取るたびの感じ方が変わりました。
国産のつまようじは、一度ほぼ絶滅していた
箱の裏に、メーカー自身がこう書いていました
商品の箱の裏面には、こう印刷されています。
爪楊枝は河内長野(大阪)の地場産業でありながら、自然環境の変化や外国産楊枝の流入に伴い、国内の爪楊枝業界全体が一時生産から撤退しました。
そんな中、国産の白樺を使用し、製造、包装を一貫して自社工場で行っています。
毎日使うものだからこそ、材料も製造も国内で行い、安心してご使用できるものをお届けいたします。

業界全体が一時生産から撤退した。
広告のコピーではなく、事実の説明としてさらっと書かれています。
つまようじが安いのは当然だと思っていました。
その安さの裏側で、国内で作る会社が一度いなくなっていたということです。
河内長野は、かつて国内シェアの9割以上を占めていた
調べてみると、大阪府河内長野市はつまようじの一大産地でした。
最盛期には国内シェアの95%を占めていたといわれています。
現在、国産の木材でつまようじを製造している会社は全国で2社だけ。
河内長野で作り続けているのは菊水産業さんの1社のみです。
95%から1社。
数字にすると、産業が消えるというのはこういうことなのかと思いました。
家にあった爪楊枝も、河内長野のものでした
気になって、それまで家で使っていた爪楊枝の袋を引っ張り出してみました。
日本製を選んでいたつもりでしたが、どこで作られたものかまでは見ていませんでした。
材料は北海道産の木材。
発売元の住所を見ると、大阪府河内長野市。
メーカーは違いますが(やなぎプロダクツさんという会社です)、産地は同じでした。
日本製とだけ確かめて買っていたものが、菊水産業さんと同じ市で作られていた。
河内長野という地名は前から知っていました。
知らなかったのは、そこがつまようじの産地だということのほうでした。
菊水産業という会社|火災で全焼、そこから再建
もうひとつ知って、買う気持ちが固まった出来事があります。
菊水産業さんは2021年10月に火災で会社が全焼しています。
そこからクラウドファンディングで支援を集め、再建して今も作り続けています。
私がこの会社を知ったのはSNSの投稿がきっかけでした。
けれど注文ボタンを押したのは、この火災と再建の話を知ったあとです。
応援したい、という気持ちが半分。
残り半分は、こういう会社が作ったものを一度自分の手で確かめてみたい、という単純な興味でした。
50年前の機械を、直しながら使い続けている
再建したあとも、順調というわけではないようです。
報道によると、白樺の原木から作った30センチほどの丸軸棒を切る工程では、50年ほど前の機械が今も使われています。
その機械を作ったメーカーはすでに廃業していて、修理を頼める相手がいない。
自分たちで改良しながらだましだまし動かしているものの、最近は不良品の割合が増えているそうです。
「誰か修理できないの?」という投稿が266万回表示されたというニュースを読んで、この商品の660円という値段の見え方が変わりました。
安く作れないから高いのではなく、作り続けること自体が簡単ではないのだと思います。
私が買ったのはこちらです。
2種類買いました|個包装の45本と、裸の300本
菊水産業さんのつまようじには、いくつかタイプがあります。
私が買ったのは次の2つです。

先に届いたのは個包装のほうでした。
7月12日に注文して、14日に到着。
300本入りのほうは注文した時点で入荷待ちになっていて、お届け予定は8月4日と表示されていました。
それが実際には7月28日に届いたので、思っていたより早かったです。
箱を開けると、中身の見た目がまったく違います。

左は1本ずつ紙に包まれていて、その紙に「KIKUSUI」「MADE IN JAPAN」と印刷されています。
右は裸のつまようじが箱にぎっしり。

どちらを選べばいいか
| 個包装タイプ | 300本入り | |
|---|---|---|
| 本数 | 約45本 | 300本 |
| 価格(税込・送料込) | 550円 | 660円 |
| 1本あたり | 約12.2円 | 約2.2円 |
| 包装 | 1本ずつ紙包み | 裸のまま箱入り |
| 向いている場面 | 来客用・手土産・お店 | ふだん使い・掃除や細かい作業 |
我が家の使い分けはこうなりました。
300本入りは食卓に置いています。
とはいえ毎日使うわけではなく、出番は数日から数週間に1回くらいです。
むしろ食後より、掃除の細かいところをつつくときや、こまごました作業の道具として使うことのほうが多いかもしれません。
隙間の汚れをかき出したり、細かいものを押さえたり。
そういう用途でも折れにくいのは、地味にありがたいところです。
個包装のほうは、来客があるときや、切り分けたお菓子を出すときに使っています。
正直に言うと、最初は個包装のほうは割高だと感じました。
ただ、人に出すときに1本ずつ包まれているものを差し出せるのは、思った以上に体裁がいいです。
贈り物として渡すなら、迷わず個包装のほうを選びます。

※下の個包装タイプは2026年8月時点で在庫切れです。上の300本入りは予約で購入できます。在庫は変わるのでリンク先で確認してください。
使ってみて|折れにくく、ちょうど良い固さ
手に取った瞬間に、質の良さが伝わってきます。
これは大げさな表現ではなくて、実際に指で軽くしならせてみると分かります。
折れにくく、ちょうど良い固さがあります。
安いつまようじだと、少し力を入れただけで先が折れたり、途中で裂けたりすることがありました。
食べ物に刺している最中に折れると、地味にストレスがたまります。
菊水産業さんのものは、その心配をしないで使えました。
表面の仕上がりもなめらかです。
ささくれのようなものが指に引っかかる感じがありません。
息子が育てたプチトマトを刺してみた
届いてまもなく、ちょうど息子が育てたプチトマトが食卓にありました。

国産のつまようじで、息子が育てたプチトマトを食べる。
書いてしまえばそれだけのことです。
ただ、産地がはっきり分かっているもの同士を組み合わせて食べるというのは、なんというか、少し上品な気分になりました。
たかがつまようじでこんな気持ちになるとは思っていませんでした。
パッケージの「妻楊枝」という言葉
箱とロゴをよく見ると、「妻楊枝」「純国産」という文字が入っています。

妻楊枝は、料理に添える細いつまようじを指す言葉です。
刺身のつまの「つま」と同じで、主役の脇に添えるものという意味合いがあります。
普段は「つまようじ」とひとかたまりで呼んでいて、漢字で書くこともありませんでした。
パッケージにこの表記があるだけで、脇役の道具にもきちんと名前があるのだと気づかされます。
私が買った爪楊枝には、頭の溝がありません
溝がないことは、注文する時点で分かっていました。
買った2種類とも、持ち手の側がつるりとしています。
いつも使っていたつまようじには、頭のほうに黒い筋のような溝が何本か入っていました。
あれが当たり前だと思っていたので、届いた実物を見るとやはり不思議な感じがします。

そもそも、あの溝は何のためにあるのか
あの溝は「こけし」と呼ばれています。
東北のこけし人形の頭に見立てた呼び方です。
由来には諸説あります。
昭和30年代の半ばに、岐阜県高山の楊枝職人がこけしを模してデザインしたという説。
もうひとつは、製造の都合から生まれたという説です。
つまようじは仕上げに研磨する工程があり、摩擦で端が黒く焦げてしまいます。
その焦げた部分をそのまま出すと見栄えが悪い。
そこで業界で話し合って、焦げた部分に溝を彫り、こけしの黒い頭に見立てることにした、というものです。
つまり装飾であって、機能ではありません。
「折って箸置きにする」は根拠のない話です
溝の部分を折って箸置きにするため、という説明を聞いたことがある人は多いと思います。
私もそう思っていました。
これは俗説とされています。
高度経済成長期に経済評論家が発言したことや、落語家が楊枝の先を折って置く所作をしたことから広まった、といわれています。
メーカーがそういう用途で作ったわけではありません。
菊水産業は、溝ありも作り続けています
では、なぜ私の買ったものには溝がないのか。
この点は、Xで菊水産業さんご本人から直接教えていただきました。
溝があるのも作ってはいるんですけどね!伝統かなと思ってるので!
2026年8月・X上でのご回答より
ただ検品で廃棄になる量も多くて直売の分だけやめました!
溝のあるタイプをやめたわけではありませんでした。
こけしは伝統として今も作られていて、溝をなくしているのは直売の分だけ。
理由は、溝を彫る工程があると検品で廃棄になる量が多くなるからだそうです。
公式サイトにも、B品を減らして資源を有効に活用するため、こけしをなくしたタイプを展開していると書かれています。
私が買ったのはどちらもAmazonの菊水産業さん公式店舗、つまり直売の分です。
全国で2社しか残っていない状況で、白樺を1本でも無駄にしたくない。
その判断と、こけしを伝統として残すこと。
その両方が同時に成り立っているのだと、作り手に聞いてはじめて分かりました。
実際に使ってみて、溝が無くて困った場面はひとつもありませんでした。
装飾が無いぶん、道具としての潔さがあります。
いつもと違って、届いたばかりの感想です
このブログでは、3年から6年ほど使い込んだものを書くことが多いです。
ビタクラフトの鉄フライパンもバルミューダの扇風機も小宮商店の傘も、長く使ってみないと分からないことがあるからです。
今回は違います。
届いてまだ数週間しか経っていません。
それでも先に書いておきたかったのは、この商品を選んだ理由のほうに意味があると思ったからです。
国産のつまようじが残り2社になっていること。
火災から再建して、50年前の機械を直しながら作っていること。
それを知って買うかどうかは、使い込む前の話です。
耐久性のようなものは、つまようじには当てはまりません。
ただ、300本を使い切るころに気づくことはあるはずなので、そのときにこの記事へ追記します。
正直なところ|100均の17倍、近所には売っていない
良いことばかり書いても仕方がないので、気になる点も書きます。
まず、価格です。
100円ショップのつまようじと比べると、はっきり高いです。
| 菊水産業 300本入り | ダイソー 850本入り | |
|---|---|---|
| 価格(税込) | 660円 | 110円 |
| 1本あたり | 約2.2円 | 約0.13円 |
| 材料 | 北海道産の白樺 | 白樺材 |
| 原産国 | 日本(大阪・河内長野) | 中国 |
1本あたりで比べると17倍近い差があります。
おもしろいのは、材料そのものは同じ白樺だということです。
違うのは、その白樺がどこで育ち、どこの工場で加工されたかという点だけ。
もうひとつのデメリットは、近所のスーパーやドラッグストアでは買えないことです。
私はAmazonの公式店舗で注文しました。
思い立ってすぐ買える商品ではありません。
それでも、高いとは思わなくなりました
17倍と書くと高く感じますが、実際に払った金額は660円です。
我が家は毎日使うわけではないので、300本あれば相当長く持ちます。
1年でどれだけ減るのか、正直まだ見当がつきません。
そして、直接口に触れるものです。
どこの材料で、どこの工場で作られたのかが分かっているものを使いたい。
その安心のために年に数百円多く払うのは、私にとっては納得できる差額でした。
さらに、この660円が国内の産業を支える側に回るなら、なおさらです。
全国で2社しか残っていない状態で、買う人がいなくなればその2社もなくなります。
高い買い物だとは、もう思っていません。
どこで買えるか|すぐ手に入るとは限りません
私が買ったのは、どちらもAmazonの菊水産業さんの公式店舗です。
2つとも送料込みの価格でした。
ただ、ここは正直に書いておきます。
この記事を書いている2026年8月の時点で、どちらの商品もすぐには買えません。
300本入りは8月末発売予定の予約受付中で、届くのは9月に入ってから。
個包装の45本入りにいたっては在庫切れで、再入荷の予定も立っていません。
私自身、300本入りを注文したときも入荷待ちで、お届け予定は8月4日と表示されていました。
つまり、常に在庫があるような商品ではないということです。
作っているのは1社。
機械は50年前のもので、修理できる相手もいない。
そう考えると、欲しいときに必ず買えるほうがおかしいのかもしれません。
Yahoo!ショッピングにも公式ストアがあります(こちらも現在は在庫なし)。
急がないなら、河内長野市のふるさと納税の返礼品を選ぶ方法もあります。
購入するときは、出品者が公式かどうかを確認してください。
菊水産業さんは過去に無在庫転売や相乗り出品の被害に遭っていて、その対応の記録が話題になったこともあります。
在庫が薄い商品ほど、こういう出品が紛れ込みやすくなります。
まとめ
つまようじも、日本製を選んでいるつもりでした。
ただ、その「国産」がどれだけ細い糸でつながっているかは知りませんでした。
調べてみると、河内長野はかつて国内シェアの95%を占める産地で、今は1社だけが残っている。
そして商品の箱には、業界全体が一度生産から撤退したとメーカー自身が書いている。
実際に使ってみると、折れにくくて仕上がりがなめらかで、道具としてもきちんと良いものでした。
個包装は来客用に、300本入りはふだん使いに。
この使い分けが我が家では定着しています。
もっとも、その個包装は今のところ在庫切れで、300本入りも予約待ちです。
買いたいときにすぐ買えないというのは、残った1社が作り続けているということでもあります。
100円ショップの17倍という数字だけを見れば高い。
でも1回あたりの負担は数円で、その差額で材料と工場が分かる安心が買えて、国内に残った産業を支える側に回れます。
食卓の端にあるいちばん小さな日用品でも、選び直す価値はありました。
なぜ我が家が日用品や食品を国産で揃えているのかはこちらの記事に書いています。
また、日本製マップでは都道府県から日本製の商品を探せるようにしています。
大阪の欄には、この菊水産業さんのつまようじも並ぶことになります。
つまようじを買い足すタイミングが来たら、一度こちらを試してみてください。



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